夢の周縁

ファミリーレストランで酒を飲んでから東京に帰ろうとすると、母親の知り合いだという幽霊みたいな顔をした営業の女が代金を今から指定する方法で払って欲しいと話しかけてきた。直接手渡せばいいのに、面倒な手順を指定してくるので、ノートにメモしようと開くと、エロ本がスクラップされていて他人に見せられる状態ではなかったので、仕方なく実家の居間にあるコピー用紙を持ってきてそれにメモをしていたら夜中の二時になってしまった。辺りは太陽もないのに真昼のように眩しいけどもう東京行きのバスはとっくにないので諦めて実家に戻って家の中を片付けていると、自転車に乗った人影が庭に入ってきて家の建物の周りをぐるぐる廻っているのが薄いガラス戸越しに見えた。だんだん怖くなってきたのでその場に固まって動けなくなっているうちに、自転車で家の周りを廻る人はあと三人ばかり増えたかと思うと、新聞受けに大量のチラシを突っ込んでどこかへいなくなった。

父親が裏庭に大量に捨ててある空き缶を拾って処理している横で顔の黄色い老人が何かをしきりに話していたようだけど自分が近付くとさっとその場を離れてどこかへ行ってしまった。父親は「自治会長になってくれとしつこいんだ」とうるさそうに言った。

空き缶が地面に埋まった道を歩きながら母屋に戻る途中、大きな陸橋の下を通り抜けた先に小さな休耕田があって、疲れていたのでそこに蒲団を敷いて横になりながら抜けるような雲ひとつない青空を見ていた。周りの田圃には水が張られ鴨がたくさん泳いでいる。空にも大小様々な大きさの鳥がたくさん飛んでいて、鷹や鷲が時折猛スピードで急降下しながら小さな鳥を鋭い爪で捕え、そのまま 地面に落下していくのが遠目にも細部まではっきりと見えた。

そのうち自分の丁度寝ている真上からパラシュートで降りてくる影が五つ六つ見えてきた。ほとんどは地面に落ちてくる前に自分の視界の外に外れて見えなくなってしまったけど、一つだけ蒲団のすぐ近くに生えていた大木に引っかかっていたような気がしてならなかったので、起き上がって様子を見に行くと、蜘蛛の糸に絡め取られたように痩せこけた裸の老人がパラシュートの紐に絡まって死んでいた。